▶︎ 他のミネラルも一覧で見る → ミネラルまとめページ
ヨウ素(Iodine):ホルモンと代謝を操る“甲状腺の司令塔”
はじめに:ヨウ素って、どんなミネラル?
「ヨウ素(ヨード)」は、甲状腺ホルモンの材料として欠かせない微量ミネラルです。
成長・発達・代謝のコントロールに深く関わる甲状腺ホルモンは、すべてヨウ素を材料にして作られています。そのため、不足すると体全体の機能低下が起きることも。
特に胎児・乳児期の発育や、思春期の成長に重要で、妊娠中は不足に注意が必要です。
ヨウ素の主な働き:ホルモンと代謝のカギを握る
- 甲状腺ホルモン(T3・T4)の材料:ヨウ素は、代謝を調整するホルモンの中心成分です。
- 成長・発達のサポート:特に胎児期・小児期の脳や骨の発達に不可欠。
- エネルギー代謝の調整:甲状腺ホルモンは体温・心拍数・消化・脂肪燃焼などにも影響。
- 神経系・情緒の安定にも関与:間接的に集中力・気分・睡眠に関わります。
どれくらい摂ればいいの?
日本人の食事摂取基準(2020年版)に基づく、1日の推奨量は次の通りです:
- 成人男女:130 μg/日(推奨量)
- 妊婦:140 μg/日
- 授乳婦:200 μg/日
ヨウ素が不足するとどうなる?
慢性的な欠乏が続くと、以下のような健康への影響が生じます:
- 甲状腺腫(こうじょうせんしゅ):ヨウ素不足により、甲状腺が肥大して腫れてしまう。
- 倦怠感・寒がり・体重増加:代謝が落ちることで起こる典型的な症状。
- 成長障害・発達遅延(特に胎児・乳幼児)
- 知能低下(クレチン症):重度の欠乏が胎児期に起こると、知的発達に重大な影響を及ぼします。
摂りすぎには注意が必要?
ヨウ素は過剰でも甲状腺機能に悪影響を及ぼすため、適量を守ることが非常に重要です。
耐容上限量(UL)※日本人成人の場合:
- 3,000 μg/日(= 3 mg/日)
過剰摂取による主な影響:
- 甲状腺機能低下症(ホルモンが作られにくくなる)
- 甲状腺中毒症(過剰にホルモンが出る場合も)
- 自己免疫性甲状腺炎(橋本病)の誘因に?
特に昆布や昆布だしを多量に摂る人は注意が必要です。
ヨウ素を含む食品と摂取のコツ
【ヨウ素を多く含む食品】
- 海藻類:昆布、わかめ、ひじき(特に昆布だしに高濃度)
- 魚介類:たら、いわし、さば、かつおなど
- 卵・乳製品:ヨウ素を濃縮しやすい
- ヨウ素添加塩(Iodized salt):海外では一般的、日本では未普及
【効率的な摂取ポイント】
- 昆布だしや味噌汁で自然に摂取可能。ただし濃すぎに注意。
- 毎日少量ずつ取り入れるのが理想的。
- 妊娠中・授乳中は特に意識して摂るべきミネラルです。
豆知識:ヨウ素は“土壌”によって摂取量が変わる
ヨウ素は土壌や水に含まれる量によって、作物中の含有量が左右されます。
そのため、内陸部の山岳地帯では欠乏リスクが高く、世界的にはヨウ素添加塩(Iodized salt)による公衆衛生対策が一般的です。
日本では海藻食文化があるため、むしろ過剰傾向になりやすいという特徴があります。