【第10回】PFASを減らすには?最新の研究と技術
このページは、全12回連載シリーズ
「PFAS(有機フッ素化合物)をやさしく学ぶ」の第10回目です。
▶ 第9回「PFASの規制と世界の対応 — 各国の現状」へ進む
PFASは「消えない物質」…だけど
PFAS(有機フッ素化合物)は非常に安定で、自然界では分解されにくい性質があります。そのため「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」とも呼ばれます。
しかし近年では、PFASを分解・除去するための技術が急速に進歩しています。
1. 活性炭や逆浸透膜で除去
すでに水道水の処理施設では、次のような「吸着」や「ろ過」の技術が活用されています。
- 粒状活性炭(GAC):PFASを吸着し、水から取り除く
- 逆浸透膜(RO膜):非常に小さな孔でPFASを通さずろ過
これらは海外や一部の自治体で既に導入されており、日本でも今後の浄水対策に活かされていくと考えられます。
2. PFASを「壊す」研究も進行中
さらに最近では、PFASを構造レベルで分解する技術が研究されています。
- 電気化学分解法:PFASを電気分解して無害な物質へ
- 超臨界水酸化:高温高圧の水の中で分子を分解
- 光触媒反応:紫外線と触媒の力で分解
これらはまだ商業化段階ではないものの、数年以内の実用化が期待されています。
3. 国内の動き:PFAS除去の取り組み
日本国内でもPFASへの対応が進んでいます。
- 一部の自治体では、水源での活性炭処理や井戸の使用中止措置
- 国立環境研究所や大学研究機関が除去技術の開発を進行
- 国の支援によるPFAS調査・対策費用の交付
これらの動きにより、「放置されている」わけではなく、着実に対応が進んでいることが分かります。
4. 未来の展望:PFASゼロへ?
PFASは完全にゼロにすることが難しい物質ですが、「排出を減らし、環境中の濃度を下げる」ことは可能です。
たとえば:
- PFAS不使用の製品開発(コーティング材・包装紙など)
- PFASの代替物質の研究・普及
- PFAS含有物の適切な処理(焼却や分解)
こうした技術の発展が、未来の安心へとつながっていきます。
まとめ:希望はある。科学は進んでいる。
「PFASは一度出ると消えない」と言われますが、今、科学者や技術者たちの手によって、“消す”ための努力が進んでいます。
私たちができることは、こうした取り組みを知り、正しい情報を信じて暮らすことです。
次回(第11回)は、自治体や地域住民の取り組みに焦点を当てていきます。
▶ 第11回「PFASとどう向き合う?自治体と市民の連携」へ進む