【第3回】PFASは健康に悪いの? ― 科学的にわかっていること

“PFASのイメージ画像"

このページは、全12回連載のシリーズ
「PFAS(有機フッ素化合物)をやさしく学ぶ」の第3回目です。

▶ 第2回「PFASはどこにある?私たちの暮らしと密接な関係」へ進む


PFASが環境中に長く残ることはわかってきましたが、「体に悪いの?」という疑問はとても大切です。
この記事では、PFASの健康影響に関して、科学的にわかっていること・まだわからないことを、できる限りやさしい言葉で解説します。

まず知っておきたい:PFASと健康影響の前提

PFASには種類が多数あり、それぞれの影響を1つずつ確かめるには膨大な時間と研究が必要です。現在の科学的な知見は、「動物実験や疫学調査などから間接的に推測されているもの」が多く、必ずしも因果関係が完全に証明されたものばかりではないことに注意が必要です。

健康影響の分類:確実・可能性あり・未解明

ここでは、米国環境保護庁(EPA)や食品安全委員会などの評価をもとに、影響を以下の3つに分類して紹介します。

分類 影響内容 PFASとの関係
確実または非常に強い可能性
  • 血中コレステロール値の上昇
  • 胎児の発育への影響
  • 免疫機能への影響(ワクチン効果の低下など)
人を対象にした疫学研究で、一定の関連が認められている
可能性あり(まだ研究中)
  • 腎臓がん、精巣がん
  • 甲状腺ホルモンの乱れ
  • 生殖機能への影響
動物実験や一部の疫学データで示唆されているが、確定的ではない
未解明・不明
  • 精神・神経への影響
  • 子どもの発達障害
  • ごく微量の長期暴露による影響
研究が進行中、またはデータ不足

「がんになるの?」という疑問について

PFASとがんの関連は、今も研究が続いています。
特に腎臓がんや精巣がんとの関係が疑われていますが、「PFASを摂取したから必ずがんになる」という確かな証拠は、今のところありません。

ただし、高濃度のPFASに長期間さらされた人(工場労働者など)でリスクが上がる可能性があることは、いくつかの研究で示されています。

「どれくらい摂ると危険なの?」

PFASの「安全な摂取量」は、種類や人の体格、年齢によって異なります。
そのため、多くの国や地域では水や食品中のPFASに基準値を設け、安全性を確保しようとしています。

ただし、日本ではまだ法的な規制は限定的で、暫定的な目標値にとどまっている段階です。

まとめ:不安に飲み込まれず、正しい情報を

PFASの健康影響については、完全に安全とも、完全に危険とも言えない状況です。
重要なのは、科学的に裏付けられた情報をもとに、必要以上に怖がらず、しかし軽視もしないというバランスのとれた姿勢です。

次回は、PFASが体にどのように蓄積され、どのくらいの期間残るのかについて解説します。

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📝この記事の出典・参考資料