【第7回】PFASの発生源と拡散ルートを知ろう
このページは、全12回連載シリーズ
「PFAS(有機フッ素化合物)をやさしく学ぶ」の第7回目です。
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PFASはどこから出てくるの?
PFAS(有機フッ素化合物)は自然界に存在するものではなく、人の手によって作られた人工の化学物質です。主な発生源は以下のとおりです。
- 泡消火剤(AFFF):空港、軍事基地、消防訓練施設などで使用され、漏洩が発生することがあります。
- 製造工場:フッ素系の製品(撥水加工、電子部品、医薬品など)を製造する過程で排出されることがあります。
- 廃棄物処理:PFASを含む製品の焼却や埋立処理時に周囲の環境に拡散することがあります。
日本での具体的な事例
- 沖縄・嘉手納基地周辺:泡消火剤に由来するPFAS汚染が報告され、河川や井戸水の調査が継続されています。
- 東京・横田基地:米軍基地で泡消火剤の使用による地下水汚染が指摘され、市民や議会の関心が高まっています。
- その他の地域:神奈川県、埼玉県など複数の自治体で、河川水や井戸水からPFASが検出されています。
環境中への拡がり方(拡散ルート)
PFASは化学的に非常に安定しているため、長期間環境中に残り、以下のようなルートで広がります。
- 土壌や地下水への浸透:泡消火剤や工場排水などが土壌に染みこみ、地下水に移動します。
- 河川や海への流出:地下水が川へと流れ出し、最終的に海にも達します。
- 大気を通じた拡散:一部のPFASは揮発性があり、大気中に移動し、雨とともに広がることもあります。
- 生物濃縮:水生生物に取り込まれ、食物連鎖を通じて蓄積していく可能性があります。
私たちにできることは?
現在のところ、政府は市民に向けて特定の生活上の対策を強く推奨しているわけではありません。過剰な心配は不要ですが、以下のような意識は役立つことがあります。
- 自治体の情報:お住まいの地域でPFASに関する調査や注意喚起が出ていないか、自治体のウェブサイトをチェックする。
- 井戸水の使用:私的な井戸水を使用している場合は、保健所や自治体に相談し、水質検査の必要性を確認する。
- 情報源を見極める:SNSなどの情報ではなく、食品安全委員会のFAQなど信頼性のある情報を参考にする。
一人ひとりが正しい情報を持つことが、不安を減らし、冷静な判断につながります。
まとめ
PFASは、限られた特定の場所から発生し、さまざまなルートで環境に広がっていきます。
その影響を理解し、正しい情報に基づいて行動することが、今できる大切な一歩です。
次回(第8回)では、食品安全委員会がまとめたFAQをもとに、PFASに対する不安への向き合い方を考えます。
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