【第9回】PFASの健康リスクはどのくらい?

“PFASのイメージ画像"

このページは、全12回連載シリーズ
「PFAS(有機フッ素化合物)をやさしく学ぶ」の第9回目です。

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PFASの健康リスクは「あるの?ないの?」

PFASが体に悪いのかどうか、気になる人は多いと思います。これまでに世界中で多くの研究が行われてきましたが、はっきりとした健康被害との因果関係が「強く確定した」と言えるものは、まだ多くはありません。

ただし、いくつかのPFASについては「健康リスクがあるかもしれない」という根拠が蓄積されつつあります。だからこそ、日本を含めた多くの国で注意深く監視・評価が行われています。

どんな影響が指摘されているの?

PFASの中でも、特に長く体内に残る「PFOA」「PFOS」などについて、次のような健康影響が報告されています。

影響が指摘されている内容 備考
コレステロール値の上昇 海外の疫学研究で一貫して示されている
免疫機能への影響 ワクチン効果の低下との関連が示唆される研究あり
発がん性の可能性 IARC(国際がん研究機関)はPFOAを「2B」(人への発がん性が疑われる)に分類
妊娠・出産への影響 出生体重の低下などの関連が報告されている

ただちに健康に影響があるの?

食品安全委員会は、「通常の飲食によるPFASの摂取量はごくわずかで、現時点では健康リスクは低い」としています。つまり、検出されたとしても、それがただちに病気につながるわけではないということです。

この点を正しく理解することが、過剰な不安を避けるカギになります。

「摂取量」と「影響」の関係

健康リスクは「どれくらいの量を、どのくらいの期間摂取するか」によって変わります。以下は概念的な図式です:

  • 短期間 × 微量 → 問題なし
  • 長期間 × 多量 → リスク増大の可能性

そのため、飲料水の水質基準などが設定されており、一般の生活の中で過剰なばく露にならないように配慮されています。

どんな人が注意すべき?

  • 井戸水を長期間飲んでいる方
  • PFASの発生源近くに住んでいる方
  • 妊娠中・授乳中の方

上記のような場合は、自治体の情報を確認し、水質検査などを活用することがすすめられます。

まとめ:健康への影響は「ない」とも「ある」とも断定できない

PFASは確かに不安材料のひとつですが、科学的には「リスクがある可能性がある」段階にとどまっているものが多くあります。
だからこそ、私たちは感情的に過剰反応するのではなく、冷静に状況を見守り、信頼できる情報をもとに判断することが大切です。

次回(第10回)は、PFASを減らすための最新技術や取り組みについて紹介します。

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