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クロム(Chromium):糖と脂質のバランスを支える“血糖コントロールの影武者”
はじめに:クロムって何?実は、血糖とインスリンの調整に関わる重要ミネラル
「クロム」と聞くと、金属やメッキ加工を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。しかし、私たちの体にとっても極めて重要な微量ミネラルのひとつです。
クロムは、血糖値の調整を助けるインスリンの働きを高める補因子として知られており、エネルギー代謝や脂質バランスの維持にも貢献します。
クロムの主な働き
- インスリンの機能をサポート:血糖値を下げるホルモン「インスリン」の働きを高め、糖の細胞取り込みを促進
- 糖質・脂質代謝の調整:炭水化物や脂質の代謝を助け、エネルギー産生に関与
- 血糖コントロールの安定化:インスリン感受性を高めることで、血糖の急上昇を抑える可能性
どれくらい摂ればいい?
クロムは日本では「目安量」として示されています。
(※2020年版では推奨量ではなく、十分な科学的根拠のある「目安量」)
- 成人男性:30~40 μg/日
- 成人女性:25~30 μg/日
※上限量(UL)は設定されていませんが、過剰摂取によるリスクはゼロではありません。
クロムが不足するとどうなる?
通常の食生活で深刻な欠乏はまれですが、不足すると次のような影響が考えられます:
- 血糖値が不安定になる:インスリンの働きが低下し、糖の代謝効率が落ちる
- インスリン抵抗性の悪化:肥満や糖尿病のリスク上昇に関連
- 脂質異常:LDLコレステロールや中性脂肪の増加が報告された例も
※特に高齢者や偏った食生活を送っている人は注意が必要です。
摂りすぎは大丈夫?
通常の食品からの摂取では過剰になることはほとんどありません。
ただし、サプリメントなどで高用量を継続摂取した場合、以下のような副作用が報告されています:
- DNA損傷
- 腎障害・肝障害
- 低血糖
長期使用や高濃度の補給を行う際は、必ず医師と相談することをおすすめします。
クロムを多く含む食品と摂取のコツ
【クロムが含まれる主な食品】
- 全粒穀物:玄米、ライ麦パン、オートミールなど
- 肉類:牛肉、鶏レバー
- 魚介類:あさり、かき、さけなど
- 野菜:ブロッコリー、じゃがいも、にんにく
- ナッツ類:アーモンド、ヘーゼルナッツ
- 酵母を使った食品:ビール酵母、パン酵母(特にクロム酵母は高含有)
【効率的な摂り方のポイント】
- 加工を控えて全粒穀物を選ぶ:クロムは精製過程で失われやすいため、なるべく未精製な食材を
- 野菜やナッツを積極的に:調理法により流出しやすいため、蒸す・炒めるなど工夫を
豆知識:クロムには「2種類」ある?
実は、クロムには健康に良いものと有害なものが存在します。
- 三価クロム(Cr³⁺):食品やサプリに含まれる、生理活性を持つ安全なクロム
- 六価クロム(Cr⁶⁺):工業用途で使用される毒性の高いクロム化合物(人体には有害)
私たちが食事から摂取するクロムは基本的に三価クロムなので、通常の食生活で六価クロムの心配は不要です。