葉酸(ビタミンB9)

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葉酸(ビタミンB9):ママと赤ちゃん、そしてみんなの健康を支える「細胞の設計士」

はじめに:葉酸は、あなたの体の「未来を育む栄養素」!

「葉酸」と聞くと、「妊娠中に摂るもの」というイメージが強いかもしれませんね。確かに、妊娠を希望する女性や妊婦さんにとって非常に大切な栄養素です。しかし、葉酸のパワーはそれだけにとどまりません。

実は葉酸は、**新しい細胞が作られる際に必要な「DNAの合成」に深く関わる**、まさに体の「細胞の設計士」とも言える非常に重要な栄養素なんです。お腹の赤ちゃんの健やかな成長はもちろん、私たち大人にとっても、**血液の健康や体の修復、そして日々の元気**を支える大切な役割を担っています。今回は、妊娠中だけでなく、**葉酸の驚くべき働き**と、**毎日の食事で賢く摂る方法**を、分かりやすく解説します。

葉酸って、どんな働きをするの?体の「細胞成長サポーター」

葉酸は、体内で様々な酵素の働きを助ける「補酵素」として機能し、主に以下の重要な役割を担っています。

  • DNAの合成と細胞分裂:私たちの体の細胞が新しく作られ、増える(分裂する)際に必要な遺伝情報の設計図であるDNA(デオキシリボ核酸)やRNAの合成に不可欠です。この働きは、特に細胞分裂が活発な胎児の成長や、赤血球の生成において重要です。
  • 赤血球の生成:健康な赤血球を作るために欠かせない栄養素です。不足すると、未熟で大きな赤血球(巨赤芽球)が増える「**巨赤芽球性貧血**」を引き起こします。
  • 胎児の神経管閉鎖障害の予防:妊娠初期の、特に胎児の脳や脊髄の基になる「神経管」が形成される時期に葉酸が不足すると、神経管閉鎖障害という先天異常のリスクが高まることが知られています。このため、妊娠を希望する女性や妊婦さんには、積極的に葉酸を摂ることが推奨されています。
  • ホモシステイン代謝:血液中に含まれるアミノ酸の一種であるホモシステインの代謝に関与しています。ホモシステインが高濃度になると、動脈硬化のリスクが高まる可能性が指摘されており、葉酸はこのリスクを低減する働きが期待されています。

このように、葉酸は私たちの体の基盤を作り、日々の健康を維持する「細胞成長サポーター」として活躍しています。

1日にどれくらい摂ればいい?

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日に摂りたい葉酸の推奨量は以下の通りです。

  • 成人男性・女性:1日あたり240µg
  • 妊娠を希望する女性・妊娠初期の女性:上記の推奨量に加え、食事からの摂取が難しい付加量として400µg(サプリメントなどからの摂取を推奨)

特に、妊娠初期の葉酸摂取は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減に非常に重要であるため、妊娠の1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの期間、サプリメントなどでの補給が強く推奨されています。

葉酸が「足りないとどうなる?見過ごせないサイン」

葉酸が慢性的に不足すると、体に様々な不調が現れることがあります。

  • 巨赤芽球性貧血:だるさ、息切れ、動悸、顔色の悪さなどの貧血症状が現れます。通常の鉄欠乏性貧血とは異なる種類の貧血です。
  • 口内炎・舌炎:細胞の再生が滞ることで、口や舌に炎症が起こりやすくなります。
  • 疲労感・倦怠感:貧血や細胞の機能不全により、体がだるく、疲れやすくなります。
  • 消化器症状:食欲不振、吐き気、下痢などが現れることがあります。
  • 胎児の神経管閉鎖障害のリスク増加:妊娠初期に葉酸が不足すると、二分脊椎や無脳症などのリスクが高まります。

これらのサインは、葉酸不足のSOSかもしれません。気になる場合は医療機関を受診しましょう。

葉酸の「摂りすぎ」も注意が必要?

葉酸は水溶性ビタミンなので、通常の食事からの摂取であれば、余分な分は尿と一緒に排出されるため、**過剰摂取による健康被害の心配はほとんどありません**。

ただし、**サプリメントなどで一度に非常に大量(1日あたり1000µg以上)を摂取した場合**には、他のビタミンB群(特にビタミンB12)の欠乏をマスクしてしまう可能性があると指摘されています。これは、葉酸がビタミンB12と協力して赤血球を作るため、葉酸が多すぎるとB12不足による神経症状を見落とす恐れがあるためです。

サプリメントを利用する際は、必ず**摂取目安量を守り、医師や薬剤師に相談する**ようにしましょう。特に、妊娠を希望する方や妊婦さんは、厚生労働省が推奨する葉酸の摂取量(通常の推奨量+400µg)を目安にしましょう。

葉酸を効率的に摂る!おすすめの食品と工夫

葉酸は、特に緑黄色野菜や豆類、レバーなどに豊富に含まれています。

【葉酸が豊富な食品】

  • 緑黄色野菜ほうれん草、モロヘイヤ、ブロッコリー、アスパラガス、枝豆、小松菜など。
  • 豆類:大豆(納豆、豆腐など)、レンズ豆など。
  • レバー(鶏、豚、牛)
  • 果物:イチゴ、マンゴー、オレンジなど。

【効率的な摂り方ポイント!】

  • 新鮮な野菜を積極的に摂る:葉酸は熱に弱く、水に溶け出しやすい性質があります。そのため、生で食べられる野菜は積極的にサラダなどで摂るのがおすすめです。
  • 加熱する場合は調理法を工夫する:茹でるよりも、電子レンジ加熱や蒸す、スープにするなど、栄養素が溶け出しにくい調理法を選びましょう。汁物なら、溶け出した栄養も丸ごと摂れます。
  • 毎日こまめに摂る:体に蓄積されにくいため、毎日継続して摂ることが大切です。
  • ビタミンB12ビタミンB6と連携:葉酸は、ビタミンB12ビタミンB6と協力して、血液の生成やアミノ酸の代謝を支えています。これらのビタミンもバランス良く摂ることで、より効率的に体内で働きます。

参考文献・出典