モリブデン

▶︎ 他のミネラルも一覧で見る → ミネラルまとめページ

モリブデン(Molybdenum):解毒と代謝を支える“酵素の黒子”

はじめに:モリブデンは「不要なものを分解する」影のサポーター

「モリブデン」と聞くと、工業材料のイメージが強いかもしれませんが、実は私たちの体にとっても不可欠な微量ミネラルです。

主に代謝と解毒に関わる酵素の構成成分として、肝臓や腎臓で静かに働いています。目立つ役割ではありませんが、体内の老廃物処理エネルギー代謝に欠かせない、まさに「縁の下の力持ち」なのです。

モリブデンの主な働き

  • 代謝酵素の構成成分:体内で働く複数の酵素(モリブデン酵素)に含まれ、栄養素の分解と代謝を助ける
  • 尿酸の生成・排出をサポート:核酸の代謝に関与し、プリン体の分解 → 尿酸の生成に不可欠
  • 体内の解毒作用:有害な硫黄化合物などの処理に関与し、肝臓の負担軽減にもつながる

どれくらい摂ればいい?

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、以下の推奨量が定められています。

  • 成人男性:25–30 μg/日
  • 成人女性:20–25 μg/日

モリブデンは豆類や穀類に多く含まれ、日本人の食生活では比較的充足しているとされています。

モリブデンが不足するとどうなる?

通常の食生活で欠乏することは極めて稀ですが、極端な偏食や遺伝的代謝異常があると以下のような症状が現れることがあります:

  • 尿酸の排出障害:プリン体代謝がうまくいかず、尿酸値が異常に低下または上昇
  • 神経系の異常:震えや痙攣、発達の遅れ(遺伝的なモリブデン補因子欠損症など)
  • 体内解毒機能の低下:一部の有害物質をうまく分解できず、体内に蓄積するリスク

摂りすぎは大丈夫?

モリブデンは過剰に摂取すると尿酸の生成が過剰になり、痛風リスクを高める可能性があります。

  • 過剰症の症状例:関節痛、尿酸値上昇、肝機能障害、消化不良など

ただし、通常の食事では過剰摂取のリスクは極めて低いとされています。サプリメント使用時は1日あたり500 μg未満を目安にしましょう。

モリブデンを多く含む食品と効率的な摂取方法

【モリブデンが豊富な食品】

  • 豆類大豆、納豆、小豆、レンズ豆、いんげん豆など
  • 穀類玄米、そば、オートミール、全粒粉パンなど
  • 野菜ほうれん草、ブロッコリー、さつまいもなど
  • ナッツ類アーモンド、くるみ、カシューナッツ
  • 動物性食品レバー、牛肉、乳製品など(含有量は植物性よりやや少なめ)

【効率的な摂取ポイント】

  • 主食の置き換え:白米を玄米や雑穀米に、食パンを全粒粉パンにすることで自然に摂取量アップ
  • 豆類を常備菜に:ひじき煮やサラダ、スープに豆を加えるとモリブデン補給に効果的

豆知識:モリブデン酵素ってなに?

モリブデンは酵素の“補因子”として働き、次のような酵素を助けています:

  • キサンチンオキシダーゼ:尿酸の生成に関与
  • アルデヒドオキシダーゼ:アルコールや薬物の代謝に関与
  • 硫酸酸化酵素:硫黄化合物の解毒に関与

これらの酵素の働きが円滑に進むことで、私たちの体は老廃物や有害物質をスムーズに処理できているのです。

参考文献・出典