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セレン(Selenium):細胞を守る“抗酸化の守護神”
はじめに:セレンとは?体のサビを防ぐ頼もしい味方
セレンは、ごく微量ながら体の抗酸化防御システムを支える必須ミネラルです。
直接的には、抗酸化酵素「グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)」の構成成分として知られ、細胞を傷つける活性酸素を無害化する役割を担っています。
そのほか、免疫機能や甲状腺ホルモンの代謝にも深く関わる、影の立役者のような存在です。
セレンの主な働き
- 抗酸化作用:活性酸素を除去するグルタチオンペルオキシダーゼの中心成分として細胞を酸化ストレスから保護
- 免疫力の維持:感染防御や炎症制御など、免疫システムの正常化に貢献
- 甲状腺機能の調整:甲状腺ホルモン(T4→T3)変換に関与し、基礎代謝の維持に役立つ
- 精子形成のサポート:男性の生殖機能の維持にも重要とされています
どれくらい摂ればいい?
日本人の食事摂取基準(2020年版)によるセレンの1日あたりの推奨量:
- 成人男性:30 μg
- 成人女性:25 μg
- 耐容上限量(UL):成人で350 μg/日
セレンが不足するとどうなる?
通常の食事での欠乏はまれですが、欠乏が続くと以下のような影響が出る可能性があります:
- 心筋障害(カシン・ベック病):中国の一部地域で報告された、セレン欠乏による心臓病
- 免疫機能の低下:感染症にかかりやすくなることがあります
- 甲状腺機能異常:甲状腺ホルモンの調整が乱れ、代謝が低下する可能性
- 男性不妊との関連:精子形成や運動性に関わることが報告されています
逆に「摂りすぎ」には注意が必要?
セレンは過剰摂取による中毒(セレン中毒)が知られているため、サプリメントなどでの摂取には要注意です。
過剰摂取による主な症状:
- 吐き気、下痢
- 爪や髪の異常(脱落、変形)
- 皮膚の発疹
- 神経障害(手足のしびれなど)
- にんにく臭の口臭(特有)
セレンを多く含む食品と摂取のコツ
【セレンを豊富に含む食品】
- 魚介類:かつお、まぐろ、いわし、さけ、すじこ など
- 肉類:豚レバー、鶏肉
- 卵、乳製品
- 全粒穀物:玄米、ライ麦パンなど
- ブラジルナッツ:1粒で100 μg超と突出して高濃度(食べすぎ注意)
【効率的な摂取ポイント】
- 魚介類を週に数回取り入れることで、安定的にセレンを確保できます
- サプリでの補給は慎重に。特に他のミネラル(例:亜鉛やビタミンE)との相互作用にも配慮が必要です
豆知識:セレンは「地質」と「土壌」の影響を受けやすい
セレンの含有量は、土壌のセレン濃度に左右されるため、地域差があります。
そのため、農産物だけに頼った食事ではセレン不足になりやすい地域も存在します(特に内陸部)。
日本では魚介類の摂取がある程度あるため欠乏はまれですが、偏った食生活では注意が必要です。